缶チューハイ 値上がりぬ
缶チューハイの店頭価格があがった。
6月に入り、店頭から90円台の価格が消えつつある。特売でも100台後半以上になっているらしい。が希望小売価格が上がったわけではない。つまり
「価格が上がった」のではなく
「安値が消えた」ということ。
それは
メーカーのリベートがなくなったから。今まで缶チューハイは氷結の発売から確実に販売量が伸びつづけ、新商品の投入は今も続く。成長市場には当然の如くリベートがつき物。
それが結果安売りの原資になっていたが、まず
低アルコール飲料最大手のキリンが一月に「氷結」の「沢山売ればやすくしますよ」という
応量リベートを廃止してオープン価格化という決断を下した。
二位のサントリーと三位のアサヒビールは応量リベートと希望小売価格は残したが、
セール時の値下げの原資となる特売支援金を圧縮した。4位の宝酒造も追随。
原資がなくなったところで素直に価格が上がる。それは至極当然のことながら、そうでなかったケースがある。そうビール。
ビールもまたメーカーが最低価格の底上げを画策したが、結局個人向け市場に置いては反発が起こり今でも価格があまり変っていない。この差はどこにあるのか。
①大義名分
今回の値上げ、事の起こりは
「缶チューハイの値段が下がり過ぎて、果汁飲料よりも安くなっている状況に対して、未成年飲酒防止の観点から国税局より改善の指導があった」とメーカーが小売店に訴えたこと。
確かに
飲料水が120円定価から値引いたとしても148円定価のはずの90円台のチューハイのほうが安いという事象は酒類関係者にとってあきらかにおかしいことだった。それが「未成年がジュースの変りに安いから缶チューハイを飲む」という理屈にどう結びつくかは疑問だが、とりあえずそれを小売側が受け入れたということになる。
片やビールの場合は
「酒類免許の規制緩和が競争激化を起こし、ビール系飲料の価格が下がり過ぎて酒販店の倒産が卸やメーカーへと連鎖すれば酒税の保全にも支障をきたす」という政府と酒類業界の保身という旗印を消費者に対して振れない、という反発が多かった。
②流通の力関係
今回の値上げは
メーカーが直接小売店(スーパー・量販・コンビニ等)に掛け合い、もともとリベートも直接払っていた。よってその意向がダイレクトにつながり、小売側も受け入れざるを得なかったと言える。
これが
ビールの場合は間に卸が入る。卸とはいわゆる問屋というもの。
メーカーにとっては、ビールが小売にそっぽを向かれても、全製品に影響すると言うわけでもない。
ところが問屋というものは、ビールが売上比率が一番のため、ビールの価格いかんによって
すべての取引を切られかねない。
イトーヨーカドーやイオンあたりは独自の流通システムをつくり、効率化により値上げ分を吸収するといいつつ結局問屋に流通センターつくらせ費用はうやむやという始末。
メーカーもそんな問屋に泣きつかれ、リベート削除もこれまたうやむやというのもやむなし。
今回も国税局の酒税課は
「価格決定は企業の自由。価格適正マージンを定めることはカルテルを誘発するのでできない」とコメントしているが前回のビールの件では酒販組合に「欧米並みの最低価格制度を導入する」と意気込んでいたのはもう昔の話。
そのかわり「酒類に関する公正な取引のための指針」(新指針)には新たな指導の可能性を含んでいると言う。それは酒類業組合法84条、「正常の域を超えた販売状況」があるときに、財務大臣が酒類の製造数量や販売価格を制限できるという内容。同時要綱は販売業者にも適用され、取引に問題があると判断されれば是正の勧告や命令を下す。過去に適用されたのは1953年の一回だけ。
ちなみに昨日の選挙の結果、民主党が参院第一党になったことで、イオンの岡田お父さんの力はますますつよくなり、そんな天下の宝刀が振るわれる機会も無さそうです。
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