先日バーで知り合った方から「お酒の勉強をしたいんだけど」と言われ、バーデビューした方でもわかりやすい薀蓄(うんちく)を書いてみたいと思います。
食事主体の店ではビールやワインや日本酒、焼酎でも水割りやお茶割りなどで、アルコール度の低いお酒を飲むことが多いと思います。それは食事の味や香りを楽しむためには、それを越えないことが求められるからです。
バーでは食事とは別にお酒自体を楽しむことが多いため、アルコールが高く、味も香りも強いものが飲まれることが多いと思います。カクテルのように飲みやすくアレンジするのもよいですが、まずは、元となるお酒にどんなものがあり、どんな特徴があるのか知っておくことがスタートだと思います。
アルコールの高いお酒をハードリカーといい、辞書には「蒸留酒」とあります。
「糖分+酵母→アルコール+炭酸ガス」という「発酵」でできたお酒を「醸造酒」(ビール・日本酒・ワインなど)、それらを蒸留することによってアルコールを高め、保存性を確保したお酒を「蒸留酒」と呼びます。
蒸留するということは、熱して揮発した成分(アルコール+香味成分+水分)のみが冷やされて集められることになります。よって蒸留酒は糖分などは揮発しない為、後から添加したものでない限り糖分ゼロ、ということになります。よって「ブランデーは太る」というのは都市伝説というかブランデー会社にとっては悪質なデマなのです。
スコッチウィスキー
「スコットランド」で作られたウィスキーを呼びます。「ピート(泥炭)」と呼ばれる、植物が枯れて堆積したものが泥状になったものを燻(いぶ)し、その煙で原料の麦に香りをつけるのが特徴です。海沿いのピートは潮風を受け、正露丸のような特有な香りを持ち「キング・オブ・スコッチ」を醸(かも)し、内陸部のピートはすっきりして「クイーン・オブ・スコッチ」と呼ばれます。
ウィスキー
スコットランド以外で作られるものを総称としてウィスキーと呼びます。最近ジャパニーズ・ウィスキーが世界で賞をとったり、かなり人気が出ています。「マッサン」でやっていたように北海道で良質なピートがとれたりします。サントリーのようなナショナル・ブランドに対して、日本の地ウィスキーなどもマイナーな人気となっています。
蒸留されたお酒は皆無色透明です。それを樽に貯蔵することで特有の琥珀色や香りがついてきます。オーク樽やシェリー(アルコール強化ワイン)を寝かせた空樽に入れることで意図的に香味をつけてそれぞれの製品の特長を出しています。
「モルト」「グレン」「プレンデッド」ウィスキー
よく聞く「シングルモルト」の「モルト」とは「大麦麦芽のみで作られた」ウィスキーを指します。多くのウィスキーはその「モルト」ウィスキーに、とうもろこしなどで作った香味の薄い「グレン」ウィスキーをブレンドした「ブレンデッド」ウィスキーとなっています。ブレンダーの腕により、より複雑で華やかな製品を作り出しています。
なお、「モルト」ウィスキー同士をブレンドすることを「ヴァッティング」といい、「ヴァッティング」もされていない単一原酒を「シングル」モルトといいます。
よって、「シングルモルト」+「シングルモルト」+・・・=「モルト」ウィスキー
「モルト」ウィスキー+「グレン」ウィスキー=「ブレンデッド」ウィスキー となります。
バーボン
アメリカのウィスキー。スコッチの大麦に対して、ライ麦やとうもろこしを原料とし、ピートの代わりに樽の内部を焼いて焦がした樽に貯蔵してスモーキーフレーバーをつけています。
ブランデー
麦など穀類の代わりに、ブドウなどの果物が原料なのがブランデーです。ブランデーを「ワインを蒸留した」とイメージすると、ウィスキーなどは「ビールを蒸留した」と比較できます。果実由来の甘い香りが特徴ですが、あくまで糖分はありません。
ブドウの取れない北の土地では、代わりにリンゴを原料にすることがあり、有名な「カルヴァドス」はノルマンディー地方でつくられるアップルブランデーのみを指します。
ジン
大麦、ライ麦、ジャガイモなどを原料とした蒸留酒。ジュニパーベリー(西洋杜松(ねず)の球果)の上に流すことによって香り付けがされているのが特徴的です。
テキーラ
メキシコのお酒で、竜舌蘭=サボテンの茎を絞った液を発酵させ、蒸留したもの。比較的スッキリしているので大量に飲む人もいるようですが、アルコール度40度くらいあるので無茶な飲み方はくれぐれも避けてください。
ラム
西インド諸島が原産地と考えられている、サトウキビの廃糖蜜または絞り汁を原料として作られる蒸留酒。樽で貯蔵し琥珀色したものを「ダークラム」、無色透明のままのものを「ホワイトラム」といい、日本の黒糖焼酎とほぼ同じです。
ウォッカ
大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモなど穀物を原材料とし、蒸留後、白樺の炭で濾過して作る。このため、エタノール成分を除けばほぼ無味無臭無色。よって、フレーバード(香りつけ)・ウォッカ以外、そのままで飲むのは少数派です。
その他蒸留酒または混成酒
マール・・・フランス特産の蒸留酒。ワインの醸造に用いた葡萄の搾りかすを再発酵させ蒸留した酒。
グラッパ・・・イタリア特産の蒸留酒で、ブランデーの一種。ワインを蒸留して作る一般的なブランデーとは違い、ポマース(ブドウの搾りかす)を発酵させたアルコールを蒸留して作る。多くは樽熟成を行わないので無色透明だが、ブドウの香りを程よく残す。
甘味果実酒(=酒精(アルコール)強化ワイン)
果実酒(ワインなど)の発酵過程の途中でブランデーなどの蒸留酒を添加し、エタノールの濃度を上げることにより酵母を殺して発酵を止め、それ以上酵母によって糖分が分解されないようにすることで、糖分を比較的多く残すという方法によって、甘味を持つように製造された混成酒。
ベルモット・・・白ワインを主体とし、香草やスパイスを配合して作られるフレーバードワイン。イタリア発祥のスイート・ベルモットとフランス発祥のドライ・ベルモットとがある。
シェリーワイン・・・スペインで生産される酒精強化ワイン。「世界三大酒精強化ワイン」のひとつである。原料は白ブドウのみ、蒸留酒やリキュールではなく、白ワインの一種である。
ポートワイン・・・ポルトガル特産の酒精強化ワイン。まだ糖分が残っている発酵途中にアルコール度数77度のブランデーを加えて酵母の働きを止めるのが特徴。
マデラワイン・・・ポルトガル領のマデイラ島で造られている酒精強化ワイン。
リキュールとは、蒸留酒に果実やハーブなどの副材料を加えて香味をスピリッツに移し、砂糖やシロップ、着色料などを添加し調製した混成酒。
次は、それらのハードリカーをどのようにして飲むか?というハードリカー割り材編に続きます。