バー初心者向けの薀蓄 ②ハードリカーの割り材

①ハードリカーの種類で、ハードリカー自体を紹介しましたがそれらをどう飲むか?に触れたいと思います。

いきなりフルーツフレーバーなどとまぜてカクテルにするのも手ですが、ハードリカーの味わいを残しつつ、それらに好みと変化を加えて楽しむのも楽しいものです。


ストレート
 まずは、そのハードリカー常温で、何も足さず薄めず味わうのがストレートです。味がそのまま判る飲み方ではありますが、アルコールの刺激が強かったり、アルコール分解能力の低い日本人には抵抗が強いこともあるでしょう。

ロック
 ロックで飲むのは二つの意味があります。一つは冷やすこと。冷やすと、酸味や苦み、香りが抑えられ、飲みやすくなる効果があります。
 もう一つは「程よく薄まる」ことです。氷が少しずつ解けることで、少しずつ薄まっていく味の変化を楽しむことが出来ます。なお、一番溶けにくいのが表面積の少ない球体、一番溶けやすいのがクラッシュアイスです。高いお酒は純氷のカチ割りでどうぞ^^

トゥワイス・アップ(二倍)、ハーフロック
 水割りでも、お酒の二倍程度に薄めることをトゥワイス・アップといいます。実はハードリカーの香りはアルコール度20度程度が一番香ると言われ、ブレンダーは原酒を20度に薄めてブレンドすると聞きます。(常温だと思いますが) 日本では「ハーフロック(濃いめの水割り)」をサントリーが提唱していますが、ロックと普通の水割りとそれを飲み比べると、ハーフロックが一番おいしい(味がわかる)、と言うことが多いのです。

水割り
 日本人しか飲まない、と言われる水割りですが、実は特徴的な作用があります。味が薄まるだけでなく「フレーバー(鼻から抜けるときの味と認識されるもの)」まで薄くなるのです。
 ドラマ「マッサン」でも、とにかく「味が強い」と不人気だったウィスキーを、日本の淡白な味だけでなくフレーバーまで合わせられた飲み方が「水割り」だったのです。逆にいうと、フレーバーを楽しみたい外国の人たちには「台無し」とされ、忌み嫌われる飲み方です。
 ちなみに分解酵素の弱い日本人には、アルコールの強い酒を短期間で飲むより、弱い水割りをたらたら飲む方が合っており、結果としてたくさん飲める、というのがヘネシー本社の世界的見解にもなっているそうです。

ハイボール(炭酸割り)
 「水割り」は世界で相手にされませんが、ハイボールは世界のカクテルブックにも載る正式な飲み方です。ちなみに「酎ハイ」とは焼酎ハイボールの略です。
 水割りとどう違うかと言うと、ハイボールの炭酸が、フレーバーを押し上げてくれ、味とアルコールは薄くなっても、フレーバー損なうことなく楽しめる、というのがハイボールの効能なのです。よって、フレーバー命の海外でも認められているというのはそういうことなのです。

 居酒屋で角ハイボールが流行っていますが、炭酸効果でフレーバーが強くなって和食のフレーバーを越えてしまいがちです。そのために「レモン」を入れています。レモンなどの柑橘系は、「匂いけし」効果があるため、炭酸で上げたフレーバーをレモンが消す、という考えられた戦略なのです。

ジンジャエール割り
 「ジン・バック」など「〇〇バック」というカクテル名にもなっていますが、炭酸に名前のとおりショウガ苦みと酸味と甘みが加えられています。その苦みも、「スイカに塩」と同じように甘みをあげる程度であり、元のお酒を「飲みやすくする」のに適しています。
 それだけでも飲みやすいですが、さらにレモン櫛(くし)切りにして2~3滴いれると、すばらしく飲みやすくなり、「茶色いお酒のめな~い」という飲み屋のおねぇさんでも、その飲み方にすると「これなら飲める」とグイグイいってくれることも多々あります。

 ちなみにレモンは2~3滴で十分で、それ以上いれるとうすっからくなって単なるレモン炭酸水に成り下がります。(アルコールはありますが)グラスにそのまま入れる場合には、途中で取り出すなどが必要です。

 なお、そのショウガ味が強いことで有名なのがウィルキンソンのジンジャエールですが、普通のものと「ドライ」とあります。「ドライ」というと、日本では「辛口」という意味合いと思いがちですが、この場合は「乾燥ショウガ使用」ということで、乾燥すると特有の辛みが消えて「マイルド」になっているので気を付けましょう。

トニックウォーター割り
 トニックウォーター とは、炭酸水に各種の香草類や柑橘類の果皮のエキス、プラス糖分を加えた割り材です。本来はキニーネという成分が加えられるとのことですが、日本では劇薬指定の為、日本製品には入っていません。代わりにピール(オレンジの皮)などの苦み渋みが特徴です。
 
 「トニック」自体には「元気づけるもの」と辞書にありますが、確かに爽快感があります。よって、ジンジャエール割りがあま~い女性向けとすれば、トニック割りは苦みも含んだ男性向け、とも言えるでしょう。


ということで、飲み方として、縦軸の濃さで言うと ストレート→ロック→トィワイスアップ→ハーフロック→〇〇割り となります。
横軸の味の広がりとしては、水→炭酸→ジンジャエール(甘みと酸味)→トニックウォーター(甘みと酸味と苦み)となります。
そのように縦軸と横軸の広がりをイメージして元のお酒をどのように飲むかを決めると楽しいと思います。


提案として、初めて飲むお酒の場合には「ロックグラス」にワンショット(30ml)お酒だけ入れてもらい、まずストレートを味わう。次に氷を足してロックを味わう。さらに半分に薄まるくらいに水をいれてハーフロックを楽しむ。最後に水を満たして水割りで飲んでみる。
 これにより、そのお酒はどのように飲んだら一番楽しめるか?を確認し、次からはその飲み方で楽しむというものです。これを他の人に一緒にやってもらうと、大抵は「ハーフロックが一番おいしい」となります。ただし「それで飲むと酔っちゃう」と仕事に差し支える、というのが飲み屋のおねぇさんの弁でした(笑)

別の「確かめ」として「フローティング」という飲み方があります。よく冷やした氷水の上にそっとウィスキーを流し込むと比重の関係でウィスキーが上に浮かびます。これを「フロート(浮揚)」している、と呼ぶのです。こうすると一口目はストレートで、飲むたびにだんだん水と混ざって薄くなる、というものです。
 「あのお酒をフローティングで一杯」なんてオーダーすると「通だな」と思われますが、あくまでバーテンさんのいるバーでの話です。中にはウィスキーの水割りの上に他のウィスキーをフロートさせ、二つのウィスキーのバッティングを楽しませるテクニシャンなバーもあります。


一つ割り材を忘れていました。「お湯」です。
ホットウィスキーなどもカクテルの一つです。炭酸に頼らず、当然に湯気にのって香り立つ飲み方で冬に限らずオススメです。

 そしてさらにオススメなのが「トディ」というホットカクテル 「ウィスキーorブランデーorテキーラ」+お湯+砂糖+レモンです。逆に見れば「ホットレモネードに酒を足した」とも言えます。
 これはイギリスでは「風邪をひいたら寝る前に飲む酒」「男が失恋したときに飲む酒」と紹介されました。これを飲むと鼻つまりでもすっと通って実に楽になります。寒いところから店に入った一杯目や、これから寒い外に出るときの一杯として非常に重宝します。


最後にチェイサーについて
 日本でチェイサー(追っかけるもの)と言えば「水」が出てくるでしょうが、どうやらアメリカ的な文化なのか、昔イギリスのバーに行ったとき、スコッチのスレート頼んだ後に「チェイサー プリーズ」と言ったら「なんだそれ」と言われ、「ウォーター プリーズ」と言ったら「何にするんだ?」と。「トゥー ストロング(強すぎる)」と言ったらしぶしぶ出してくれました。
 イギリス人の友人に水飲まないのか?と聞いたら、「強い酒を飲んだら喉が荒れるので、次にはビールでチェイスして洗い流すよ」と笑われました。さすが強酒国。

 それはさておき、チェイサーは水だけに限らず、炭酸でも、ジンジャエールでもトニックウォーターでも、さらにビールでも構わない訳です。割って楽しむのもいいですが、時にはストレート+後追い割り材で「口の中カクテル」を楽しむのも一興です。

口の中カクテル」で有名なのは「ニコラシカ」と「テキーラ・ホッパー」です。
ニコラシカ・・・ブランデーショットグラスに入れ、その上に輪切りのレモンを乗せ、その上に砂糖を盛ります(バーではシュガーパウダーをメジャーの底などに押し付けて形をつくり乗せます)。レモンと砂糖を口の中に入れて味を広げた後、一気にブランデーを流し込んで混ぜて口の中でカクテルを作ります。
テキーラ・ホッパー・・・テキーラ2/3とジンジャエール1/3をシヨットグラスに入れ、手のひらなどで押さえてテーブルにグラスを叩いてシュッワっとしたところを一気に飲みます。泡が立つ分、テキーラの癖がより抑えられて飲みやすいというものです。

ショット・ガン・テキーラ・ホッパーと勘違いされていますが、「ショット・ガン」はカクテルではなくスタイル(飲み方)です。スピリッツ(糖分添加のないハードリカー)に炭酸を入れ、ライムなどを口に入れたりしつつ、テーブルに打ちつけて泡と共に飲むものです。「ウォッカをショットガン・スタイルで。ライムをつけて」なんてオーダーするわけです。
テキーラ・ホッパーはこのスタイルで飲むカクテル、ということになります。


次は、バーに入った際の「注文法」を書きたいと思います。


※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
バー初心者向けの薀蓄 ②ハードリカーの割り材
    コメント(0)